お久しぶりです。サネカズです。
今回は、沖縄語池袋方言の文法について、簡単に書いておこうと思います。
私は言語学者とかではないので、ところどころ不備があるかもしれませんが、軽く読んでいただけますと幸いです。
なお、いちいち「沖縄語池袋方言」と書くと長くなってしまうので、簡単に「沖縄語」と書いておきます。断りのない限りは、「沖縄語」は「沖縄語池袋方言」と思って読んでください。加えて、「日本標準語」のことを「大和語」と表記することとします。
基本は大和語と似ている
沖縄語の文法は、基本的には大和語と同じです。
「文」を基本単位とし、文は「修飾部(主部含む)」と「述部」の組み合わせによりできています。場合によっては、前の文との接続を表す「接続部」や、呼びかけなどを表す「独立部」が含まれることもあります。
1つの文において、修飾部は複数ある可能性がありますが、述部は基本的に1つしかありません(いわゆる複文では述部が複数あるように見えますが、主要な述部は最後の一つのみです)。普通、述部は文の最後に来ます。
- 沖縄語『我[わん]ねえ(修飾部1/主部)昨日[ちぬう](修飾部2)魚[い゛ゆ](修飾部3)噛[か]だん(述部)。』
大和語「私は(修飾部1)昨日(修飾部2)魚を(修飾部3)食べた(述部)。」
接続部および独立部は基本的に文の最初に来ます。両方あるときはどちらかが2番目に来ます。
- 沖縄語『やくとぅ(接続部)今日[ちゅう]や(修飾部1)肉[しし](修飾部2)噛[か]むん(述部)。』
大和語「だから(接続部)今日は(修飾部1)肉を(修飾部2)食べる(述部)。」
- 沖縄語『はあ(独立部)、肉[しし](修飾部)噛[か]みぶさん(述部)。』
大和語「ああ(独立部)、肉が(修飾部)食べたい(述部)。」
それぞれの部は1つあるいは複数の「文節」からなっており、それぞれの文節は1つの「自立語」といくつかの「付属語」の組み合わせでできております(自立語と付属語の総称が、いわゆる「単語」です)。付属語がなく自立語のみの文節もあります。1つの文節からなる部のことを「語」(修飾語など)といい、複数の文節からなる部を「節」や「句」(修飾節、修飾句)と言ったりします(両者の違いは大和語と同じで、述部が含まれれば節、含まれなければ句です)。
もちろん、各部の省略や順序の入れ替えが発生することもあります。
品詞の種類も大和語と同様
品詞の種類も大和語と同様で、「動詞」、「形容詞」、「形容動詞」、「名詞」、「連体詞」、「副詞」、「接続詞」、「感動詞」、「助詞」、
「助動詞」の10種類あります。助詞、助動詞の2種は付属語で、その他は自立語です。また、動詞、形容詞、形容動詞、助動詞の4種は、その役割や意味の変化により語形変化が生じる「活用」をします。
これら10個の品詞に加え、他の語の前後につき意味を付け加える(修飾する)「接辞」もあります。
動詞
動作や状態を表します。後に説明する形容詞、形容動詞以外の語であり、言い切りの形(終止形)が『ん』で終わります。大抵の場合は『ぅん』で終わりますが、『いん』や『ぇえん』、『あん』、『ぉおん』などで終わるものもあります。活用をします。
- 『取[とぅ]ゆん』「取る」
- 『噛[か]むん』「食べる」
- 『あ゛ん』「ある」
- 『めんしぇえん』「いらっしゃる」
形容詞
主に状態を表します。言い切りの形(終止形)が『さん』で終わります。「サ形容詞」などと呼ばれることもあります。活用をします。
- 『まぎさん』「大きい」
- 『高[たか]さん』「高い」
- 『清[ちゅ]らさん』「美しい」
形容動詞
主に状態を表します。言い切りの形(終止形)が『やん』で終わります。「ナ形容詞」などと呼ばれることもあります。活用をします。『〈名詞〉やん』の形と似ていますが、形容動詞の場合は名詞を修飾する形(連体形)として『〈形容動詞語幹〉な』が許されます。
- 『頑丈[がんじゅう]やん』「健康だ」
- 『上手[じょうじ]やん』「上手だ」
名詞
主に物事などを表します。
- 『我[わん]』「私」
- 『男[うぃきが]』「男」
- 『くとぅ』「こと」
連体詞
主に名詞の前につき、その名詞を説明(修飾)します。
副詞
名詞以外の語の前に置かれ、意味を付け加えたり(修飾)します。
接続詞
前後の文や語などを繋ぎます。基本的に接続語になります。
- 『やくとぅ』「だから」
- 『やしが』「しかし」
- 『また』「また」
- 『う゛りから』「それから」
感情の動きなどにより口から出る語を表します。通常は独立語になります。
助詞
付属語です。他の語の後ろにつき、その語の役割を示したり意味を変えたり付け加えたりします。
助動詞
付属語です。他の語の後ろにつき、その語の意味や使われ方を変えたりします。活用をします。
- 『りゆん』「られる」
- 『みしぇえん』「なさる」
- 『ぶさん』「たい」
- 『ぎさん』「そうだ」
接辞
助詞に似ていますが、単語の前後につき、その単語に意味を付け加えたり(修飾)し、新たな単語を作ります。前につくものを「接頭辞」、後ろにつくものを「接尾辞」と言います。助詞・助動詞が元の単語と分けて数えられるのに対して、接辞の場合は元の単語と合わさって一つの単語として数えられます。ただし、分類によっては一部の助詞・助動詞が接尾辞として扱われることもあります。
各部と品詞の関係も大和語と似ている
各部(主部、修飾部、述語、接続部、独立部)と品詞の対応も、大和語と似ています。
主部
上では修飾部にまとめてありましたが、ここでは一応分けて考えます。主部は大和語では「〈名詞〉は」あるいは「〈名詞〉が」で表現されますが、沖縄語では主に『〈名詞〉や』と『〈名詞〉ぬ』で表されます。ここで、『や』および『ぬ』は助詞です。
- 沖縄語『沖縄[う゛ちなあ](名詞)や』
大和語「沖縄は」
- 沖縄語『沖縄[う゛ちなあ](名詞)ぬ』
大和語「沖縄が」
ただし、後ろの名詞によっては『や』が融合して変形したり、『ぬ』の代わりに『が』が使われたりもします。
- 沖縄語『大和[やまと]お(『大和[やまとぅ](名詞)+や』の融合形)』
大和語「日本本土は」
また、『や』や『ぬ』が使われているからといって主部であるとは限りません。もっと言えば、大和語と同様、明確な主部が存在しない文もありえます。
修飾部
『〈名詞〉〈助詞〉』、『〈副詞〉』などで表されます。割と自由度が高いです。大和語における「〈名詞〉を」を表すときは、沖縄語では何もつけず単に『〈名詞〉』となります。また、『今日[ちゅう]』などの名詞がそのまま副詞的に使われることもあります。
- 沖縄語『大和[やまとぅ](名詞)んかい(助詞)』
大和語「日本本土に」
- 沖縄語『今日[ちゅう](副詞的に使われる名詞)』
大和語「今日(は、に)」
述部
主に『〈動詞〉』、『〈形容詞〉』、『〈形容動詞〉』、『〈名詞〉やん』が使われます。ここで、『やん』は助動詞です。後ろに助動詞や助詞がつくこともあります。また、『〈名詞〉やん』の形はその名詞や状況によっては『やん』が省略されて『〈名詞〉』の形になることもあります。
- 沖縄語『頑丈[がんじゅう]やん(形容動詞)』
大和語「健康だ」
- 沖縄語『男[うぃきが](名詞)やん』
大和語「男だ」
- 沖縄語『取[とぅ]ゆる(動詞連体形)はじ(名詞)』
大和語「取るだろう」
接続部
主に『〈接続詞〉』が使われます。
独立部
主に『〈感動詞〉』、『〈名詞〉』が使われます。『〈名詞〉』の後ろに助詞がつくこともあります。
- 沖縄語『太郎[たるう](名詞)よお(助詞)』
大和語「太郎よ」
「節」と「句」
いくつかの単語が修飾する/されるの関係で繋がって、一つの語のように振る舞うことがあり、これを「節」や「句」と呼びます。一般に、文相当の構造(修飾部+述部)を持つものを節、持たないものを句と呼びます。○○詞相当の働きをする節や句のことをそれぞれ「○○節」、「○○句」と呼びます。例えば、副詞相当の節なら「副詞節」、名詞相当の句なら「名詞句」と呼びます。入れ子になることもあります。
- 沖縄語『我[わん]が暮[く]らちょおる(名詞+が+動詞持続連体形:連体詞節)家[やあ](名詞)』(※)
大和語「私が暮らしている家」
- 沖縄語『彼[あ゛り]が厚[あ゛ち]さる書物[すむち](名詞+が+形容詞連体形+名詞:名詞句)』
大和語「彼の厚い本」
さらに(※)の場合は(連体詞節+名詞:名詞句)という入れ子構造になっていると見ることもできます。
例文
最後に、例文を書いておきます。
- 沖縄語『近頃[ちかぐろ]お(名詞+や(融合):修飾部)良[い]い天気[わ゛あちち]ぬ(接頭辞+名詞+ぬ:主部)続[ちじ]ちょおたん(動詞持続過去形:述部)。』
大和語「最近は良い天気が続いていた。」
- 沖縄語『やしが(接続詞:接続部)、今日[ちゅう]や(名詞+や:修飾部)雨[あ゛み]ぬ(名詞+ぬ:主部)降[ふ]とおん(動詞持続形:述部)。』
大和語「しかし、今日は雨が降っている。」
- 沖縄語『はあ(感動詞:独立部)、洗[あ゛れ]え物[むん]ぬ(名詞+ぬ:修飾部)干[ふ]さらんやあ(動詞未然形+助動詞否定形+助詞:述部)。』
大和語「ああ、洗濯物が干せないなあ。」
助詞の詳細や動詞などの活用については、また今度まとめようと思っております。
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